問題意識
これまで、
- ある相場では大きく稼げる
- 別の相場ではまったく稼げなくなる
という現象を、
「相場環境が変わった」「得意相場ではなかった」
と感覚的に処理してきた。
しかしこの説明では、
なぜ稼げる時と稼げない時が分かれるのかを
再現可能な形で説明できない。
この違和感の正体を、
確率変数・期待値・確率収束の観点から整理する。
一般的トレード手法における暗黙の前提
一般的なトレードでは、1回のトレード損益を暗黙に
という確率変数として扱っている。
ロスカットや利食い、
直近高値・安値などは定義されており、
一見すると「平均を取れる量」が存在しているように見える。
しかし実際には、
- トレンド認識(ダウ理論)の解釈が人・場面で変わる
- マルチタイムフレーム分析の主語切替が裁量に依存する
- スイング高値・安値、水平線の引き方が一定でない
結果として、
同じ XiX_iXi という記号で、異なる分布の損益を混ぜている。
この状態では、
となり、
標本平均を取っても確率収束を期待する前提が崩れている。
確率変数の再定義が必要になった理由
確率収束を語るためには、
- 何を平均しているのか
- その平均対象が「同一分布とみなせるか」
が明確でなければならない。
しかし一般的手法では、
相場の世界線や主語階層がトレードごとに変化しうるため、
確率変数の定義そのものが不安定である。
この問題を避けるため、
極値理論ではトレード損益を再定義する必要が生じた。
極値理論における確率変数の再定義
極値理論では、トレード損益を次のように定義する。
これは無条件の確率変数ではなく、
構造条件を固定した条件付き確率変数である。
この定義により、トレード間で以下が固定される。
- 主語階層
(どの時間足が相場の意味を支配しているか) - 母型
(世界線の状態がどの母型に属するか) - 構造状態
(極値成立、構造ゼロ化などが明確に判定されていること)
一方で、
価格変動による損益のみが確率的に変動する。
母型③・構造ゼロ化ゾーン戻り狙いという位置づけ
母型③は5つの母型の中で最も高頻度であり、
相場の「通常運転」に近い状態である。
その中でも、
- 構造ゼロ化ゾーンが成立し
- 旧構造の意味が失われ
- 戻りが発生する局面
は繰り返し出現する。
このため、
母型③ × 構造ゼロ化ゾーン × 戻り狙い
という条件は、
十分なサンプルを集めやすく、かつ分布が混ざりにくい。
ただし、
注文の流れを無視すると
ゼロ化ゾーンへの「張り付き」と
戻り局面を混同する危険がある。
したがって注文の流れは、
エントリー条件ではなく
確率変数を分ける説明変数として扱う。
メンタル問題の再解釈
一般的手法でメンタルが不安定になる理由は、
意志や精神力の問題ではない。
- 期待値が存在しているか分からない
- 今回のトレードがどの分布に属するか分からない
この不確実性が、
感情や成功体験を介入させる余地を生む。
極値理論では、
- 今回はどの母型か
- どの世界線か
- これは単なる1標本か
を言語化できるため、
メンタルは結果として安定する。
進化ポイント(結論)
以前は、
上級者は得意相場を察知できる
としか説明できなかった。
今は、
確率変数が切り替わったことを察知し、
期待値が存在しない分布から撤退している
と説明できる。
そして極値理論は、
この切替を感覚ではなく
構造と定義によって固定する試みである。

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